猫輪廻転生談    ビラーラ・ジャータカ

……サキャ神賢の素晴らしき世界……

 これは、尊師がジェータ(勝利者)林で時を過ごしておられたときに、一人のぺてん師の向煩悩滅尽多学男に関して講演なさったものです。
 というのは、そのとき尊師は、彼のぺてん師の本性が告げられたとき、
「向煩悩滅尽多学男たちよ、今だけではなく、前世においても、この人はまさにぺてん師であったのだ」
 このように言って、物語をお話しになったのです。

 その昔、バーラーナシー(剣の城壁)でブラフマダッタ(神聖賦与)が君臨していたころ、到達真智運命魂はネズミの子宮に輪廻して、発達のせいで若豚と同じ大きな肉体になって、数百のネズミの従者団が森で時を過ごしていました。それで、一匹のヤマイヌがあちこちさまよい歩いていて、そのネズミの群集を見て、
「これらのネズミをごまかして食べよう」と思念すると、ネズミの群れの住みかから遠くないところで太陽に向かって、風を吸い込みながら、一本の足でとどまりました。
 到達真智運命魂はえさのために歩き回っていて、彼を見ると、
「一匹の戒を持す者に違いない」 と、彼の面前に行き、
「尊者よ、あなたは何という名前でいらっしゃいますか」 と質問しました。
「ダンミカ (法則にのっとった)という名前です」と。
「四本足を地の上に置かないで、なぜ一本だけでとどまっているのですか」と。
「わたしが四本足を大地の上に置くと、大地が耐えることができない。この理由ゆえに、一本だけでとどまっているのです」と。
「なぜ、口を開いてとどまっているのですか」と。
「わたしたちは他のものを食べることがありません。風だけを食べるのです」と。
「それでなぜ、同様に太陽に向かってとどまっているのですか」と。
「太陽に帰依しているのです」と。  到達真智運命魂は彼の言葉遣いを聞くと、
「一匹の戒を持す者に違いない」 と、そのとき以来、ネズミの多数の群れと一緒に、夕方と朝早くに彼の奉仕に行きました。
 それで、この者に奉仕をして去るとき、ヤマイヌはすべてのうちで最後のネズミを捕らえると、肉を食べて、飲み込み、口をふいてとどまりました。やがて、ネズミの多数の群れは少なくなりました。
 ネズミの群れは、
「以前、わたしたちにとってこの住みかは足りなかった。隙間もなくとどまっていた。今、ゆったりして、このように同様に住みかはどうしても満ちることがない。これは一体どうしてか」
と、到達真智運命魂にその出来事を告げました。
 到達美智運命魂は、
「一体何のわけによって、ネズミの群れが削減に及ぶのか」と思念しながら、ヤマイヌに対して容疑を設置して、
「彼を取り調べよう」 と、奉仕のときに、生き残っているネズミの群れを前方にして、自ら後ろになりました。ヤマイヌは彼の最上部で飛びかかりました。到達真智運命魂は自分自身を捕らえるために飛びかかったのを見て、逃げ、
「おいヤマイヌよ、お前のこの宗教的義務に(義務・責任を)負うことは、法則の優れた法則の本質のためにあるのではない。したがって、お前は他人たちに対する残酷のために、法則の旗を据えて動き回って生活しているのだ」
と言って、この詩句を言いました。

「偽りなく法則の旗を据えて、
 知られないようにして悪を慣習とする者が、
 生物の群れを信頼させるなら
 その宗教的義務は猫という名前である」と。


 ネズミの王はまさに主張しながら、飛び上がって彼の首に落ち、あごの下の咽頭の内面にかみついて、咽頭を破裂させて生命の破壊に至らせたのです。ネズミの多数の群れは引き返すと、ヤマイヌをパリパリと食べて去りました。最初にこちらに来た群れだけは、この者の肉を得たが、後からこちらに来た群れは得ることがなかったそうです。そのとき以来、ネズミの多数の群れは恐怖がなくなりました。

 尊師は、この法則を説くことをもたらして、輪廻転生談に当てはめられたのです。
「そのときのヤマイヌはぺてん師の向煩悩滅尽多学男であり、さて、ネズミの王は、まさにわたしなのである」と。

『覚醒の時』1998年03月号p150−152